島之内フジマル醸造所


最近、このご時世でワインも値上がりし困っているwinebuffです。さて、2022年3度目のワイン旅行なのですが今年は全て関西地方。特に意識をしていたわけではなかったのですが、たまたまそうなってしまいました。和歌山、神戸と続いて今回は大阪です。大阪は以前、羽曳野や柏原のワイナリーを訪問した事があったのですが、この旅では変わり種のワイナリーに訪れました。

今年3度目の羽田-伊丹便。もう手慣れたもので特にトラブルも無く、スムーズに移動できました。午後便だったので早朝に有りがちな不便も無く、時間の余裕も十分。とはいえ、先週末、台風で3連休が台無しになったのに続き、今週も結構危なかった!運良く東に外れてくれましたが、もし本州を直撃していたらこの旅行も延期になっていたかもしれません。

今回宿泊するお宿は、「天然温泉 花風の湯 御宿 野乃 なんば」。ドーミーインブランドの和風プレミアムホテルで、なんばの日本橋駅徒歩1分と利便性抜群。ホテルの快適性はそのままに、都心で旅館気分と温泉が愉しめます。写真のように入り口から日本旅館の雰囲気全開です。インバウンド向けのなんちゃって日本風の匂いが漂っているところが少々不安ですが、早速チェックインしましょう。

ホテルは普通、部屋の中も土足ですが、ここは旅館同様、入り口で靴を脱いで素足で移動です。廊下もこの様に畳敷きで基本、スリッパもありません。(フロントで頼めばもらえますが。)郊外の温泉宿なら珍しくないのですが、繁華街のシティホテルでこの様式はあまり無いなと驚きました。

部屋の中ももちろん畳敷きです。和洋折衷ですがシングルベッドが2台しかなく、3人目、4人目は備え付けの和布団を敷きます。ちなみに障子の向こうは普通のガラス窓で隣のビルが見えます。雰囲気が台無しになるので開けてはいけません。あと、写真はありませんが、温泉もあり露天風呂風の外湯(もどき)やサウナも完備。風呂上がりにアイスや乳酸菌飲料のサービスもあり嬉しい限りです。winebuffは21時30分から供される無料のラーメンもしっかりいただきました。

さて、余裕をもってチェックインをしたので、まだディナーにはかなり時間があります。せっかくですので大阪観光をしようということで、近隣の大阪城にやってきました。大阪といえばやはり大阪城。ここを外すわけにはいきません。しかし、天守閣に登るためには16時30分までにチケットを購入する必要があり、城内を走っていたカートのようなタクシーに乗ってショートカット。

城門まで送って頂き、時間前に無事到着。winebuff一行は蚊の大群(大袈裟な)に襲われ難儀していましたが・・・。この門から入って暫く歩くと本丸に聳え立つ天守閣が眼前に現れます。

この天守閣は、豊臣、徳川時代に続く3代目のもので、昭和6年に市民の寄付金によって再建されました。高さ55mの鉄筋コンクリート製で、内部にはエレベータもあり、位置や形状からも以前の天守閣とは別物。良く観光客向けのハリボテと揶揄されたりもしますが、近くで見ると堂々としていて存在感がある立派な大阪のシンボルです。

エレベータで最上階の8階に上がると廻縁があり、外から大阪の360度の風景が楽しめます。金のシャチホコも見えますが、その向こうにある洋館が旧第四師団司令部庁舎で、現在のミライザ大阪城。winebuff一行は、この後ミライザでアイスを食べました。

さてさて、大阪城観光で時間を使ったのち、頃合いも良く19時に本日のメインイベント、「島之内フジマル醸造」」にやってきました。こんな夜に醸造所の見学?と思われた方、説明が足りませんでしたね。ここは、1階が醸造所で2階がレストランになっているのです。レストラン併設の醸造所というより、むしろレストランに醸造所が併設されているといった方が良いかもしれません。では、早速入ってみましょう。

ドアを潜るとすぐにこの様な階段が。バリアフリーでないのが残念ですが雰囲気がありますね。フジマル醸造所は、松屋駅から歩いて数分、南北に流れる運河に面した石材やセメントを扱う会社のビルに入っています。以前のブログで「清澄白河フジマル醸造所」を紹介したことがありましたが、今回の「島之内フジマル醸造所」とは、経営母体が同じです。清澄白河の方は、2015年オープンですが、島之内の方は2013年でこちらの方が歴史があります。

店内の作りは清澄白河のお店と似て木の温かみがある落ち着いた雰囲気です。カウンターが6席でテーブルが6卓、合わせて26席のどちらかといえば小規模のレストランです。

winebuff一行が入店した際はまだ空席があったのですが、あっという間に満席に。その後、何組かのお客さんがいらっしゃいましたが予約無しでは席が確保できず無念の撤退。木曜の夜でしたが三連休の前日だったので会社帰りの団体さんもちらほら。カップルや女性客も年齢高めでファミリー向けよりもワイン好きの大人の隠れ家という感じでしょうか。

料理は、ワインに合う創作イタリアンで、旬の食材を重視しているためメニューはかなり頻繁に更新されるそうです。一皿目は、「彩り野菜のテリーヌ、人参とベリーのソース」です。色彩も豊かなフジマル醸造所の名物料理、旬の野菜の美味しさが詰まっています!(メニューの受け売りです。以下、同文。)

お次は、「シュクレクールさんのプティバゲット」です。北新地にある有名店のパン屋さんのバゲットで噛めば噛むほど旨みを感じます。

パスタは、「フジマル特製!シンプルな濃厚トマトソース ブカティーニ」です。トマトソースにチーズを乗せただけのシンプルな一品です。小さな子供を連れていると辛かったり苦かったりする味付けは不可なので、こういったスタンダードなものをチョイスすることが多いです。とは言え、このうどんみたいなスパゲッティは何か懐かしい感じで美味しかったです。

今回食べたメニューでwinebuff一押しなのが温菜のこれ「豚足とジロール茸 インカのめざめ ガルビュールのグラタン仕立て デュカ風味」です(長い…)。メニューの文言には、「トロトロぷるんぷるんの豚足に、あんずのように甘い香りのジロール茸に栗のようにホクホク甘い、インカのめざめをスープグラタン仕立てに。熱々をハフハフする幸せ♡秋だな〜。」とありました。因みにご存知と思いますが「インカのめざめ」とは糖度の高い小ぶりのジャガイモです。味付けも良く、前述のバゲットをスープに浸して食べるとまさに絶品。

メインはやはり肉。「なにわ黒牛のグリル 大阪狭山産ダンデリオンのサラダ添え」です。大阪の銘柄牛「なにわ黒牛」の美味しさをダイレクトに感じる、フジマル醸造所の自慢の一品、だそうです。我々は100gで十分だったのですが、お店のスタッフの方がしきりに「これでは足りませんよ」と増量をプッシュ。それ以外でも、「もう一皿いかがですか?」と何度もリコメンド。さすが大阪商人、東京とはちょっと違いますな。

肝心要のワインはこちら。素晴らしい料理とマリアージュすべくチョイスしたのが「キュベパピーユ大阪RED2020」です。大阪自社農園のメルローとマスカットベーリーAのブレンドワイン。ベーリーA特有の甘い香りがありますが、味わいは酸味が強いミディアムライトボディ。昨今のベーリーAは、酸味を抑え果実味を重視した作りになっている事が多いのですが、これはクラシカルな味作り。正直、料理に合わせるにはもう少し力強いボディが良いのですが、日本の葡萄だとこのあたりが限界でしょうか?

ワインダイアリーのテイスティングメモ

お店を下調べしていた際とある記事に、二階のレストランの窓から運河が眺められるとあったのですが、夜間では流石に厳しいだろうと思い眺望は特に期待していませんでした。それでも少し覗いてみようかと席付近の窓を見たのですが、おやおやここから一階の醸造設備が俯瞰できるではありませんか。聞けば一階の醸造所も見学可能とのこと。

上から見ると何かを発酵させているように見えます。訪問時が9月ということだったので今年度の仕込み作業の最中でしょうか?後で詳細を伺ってみましょう。

スタッフの方に一階正面の扉の鍵を開けて頂き中に入ると、ところ狭しと樽やらバケツやらが置かれて足の踏み場もありません(と言うのは言い過ぎですが、設備が押し込められてとてもせまく感じたのは事実です)。見えにくいのですが、オレンジバケツの中にはジョージア製の、ワイン醸造、熟成等に使用する素焼きの粘土製容器「クヴェヴリ」が。これはオレンジワイン用とのことでした。

葡萄の発酵に使う巨大なバケツ。少なくとも10個はありました。大部分は空になっていたのですが、もう既に使い終えたということなのでしょうか?

その陰に隠れるようにして鎮座していたのが金属製の圧搾機。普通はイタリアなどから輸入するらしいのですが、これは大阪の町工場に図面を持ち込んで作って頂いた機器とのこと。輸入品は高価だからと言っておられましたが、これはこれで結構お値段が掛かったらしいです。でも故障時のメンテナンス費用など考えるとこの方がリーズナブルとの説明も。

先ほども見た発酵中のぶどう達。天然の酵母を加えて発酵させており、ぶくぶくと泡が出ていました。

奥に1個だけ日本製の杉樽も。日本製の樽を使うのは初めてだそうで、最初だけ使用してその後タンクに移すそうです。ジョージアのクヴェヴリもそうですが、圧搾機を自作したり和樽を使用したりと新進のワイナリーだけあって様々な手法を積極的に取り入れている姿勢に感服しました。

決して広いとはいえないスペースでぶどうの発酵からボトリング、ラベリング作業まで全てを行なっています。一通り説明を受けた後、歩いてホテルまで帰りました。ホテルの部屋ではお店で飲み残して持ち帰ったワインを寝酒に頂き、本日の予定は終了。そうそう、寝る前にはもちろん温泉にも入りました。

翌日は、もう少し大阪観光をという事でやってきました、万博記念公園。大阪のシンボルといえば大阪城や通天閣が真っ先に思い浮かびますが、万博記念公園の太陽の塔もそれと並び称されるくらい有名です。みなさんご存知、あの岡本太郎が1970年に開催された日本万国博覧会のために制作した芸術作品であり、万博終了後も引き続き万博記念公園に残されたもので、2020年には国の登録有形文化財に登録されています。

あまり写真では見ないのですが、背中はこうなっています。大阪城同様、鉄筋コンクリート製で全長71mと大阪城よりも高い建造物です。ただ、近くから見ると築50年以上経過しているということもあって老朽化が目立ちます。もともとは屋根が付いていたのですが、だいぶ前にそれも撤去されていますし、この塔もいつまで見られるか・・・。

万博終了後は、太陽の塔内部の観覧は中止されていたのですが、2018年に48年ぶりに内部を公開。新型コロナウィルス感染症予防のため暫く観覧が中断されていましたが、半年後に再開。winebuff一行もwebで事前予約をして塔の地下空間を探検してきました。

内部には、太陽の塔の4つめの顔「地底の太陽」のレプリカが飾られ妖しく光っていました。ちなみにこの地底の太陽は「人間の精神世界」を表現しているそうで、最新のプロジェクションマッピングも活用してリニューアルされていました。そして写真の「生命の樹」。原生時代から人類に至るまでの、約40億年に渡る生命の進化の過程を表現した芸術作品で高さは約41m。樹の枝には200体近くもの生き物が展示されています。生命の樹を取り囲むようにして配置されている螺旋階段を下から登って観覧するのですが、何分老朽化が激しい設備なので展示されている生き物も塗装が剥げたり、頭がもげて中の機械が露出しているものもありました。また、腕の部分の屋根へと続くエスカレータなども現在は稼働していません。館内のスタッフの方も施設保全にかなり注意を払っているようで、各観覧スペースの人数も厳しく制限されていました。それでも太陽の塔の真髄を垣間見る事ができてとても良い経験ができました。

さて、本日のワインですが、どうしましょうか。
公園はファミリーが昼間に行くような場所でワインなどとは程遠い世界。でも転んでもただでは起きない?winebff。万博記念公園に行く前にちゃっかり下調べをしておりました。ホテルからは阪急直結の地下鉄で山田駅までやってきて、モノレールに乗り換えたのですが、その山田駅付近に一軒良さげなワインショップを見つけました。それがここ「Nord wine store」です。

イタリアやフランスのビオワイン中心のラインナップで、イタリアで修行されたソムリエオーナーの趣味が色濃く反映された店内。かなりおしゃれです。カウンターもあってwinebuffが訪れた際も数人のお客さんがワインを楽しみながら談笑されていました。こういう時にはお店の人に聞くのが一番ですね。今晩の晩酌用ワインを探しているのですが、リコメンドお願いします!

そして数本出して頂いたワインの中から選んだのがこれ。ラングドック地方の赤ワイン「Domaine Bassac Jetaime」。カベルネフラン40%、グルナッシュ40%、シラー20%のブレンドで、なかなかコスパの良いワインでした。

ワインダイアリーのテイスティングメモ

帰路も行きと同様伊丹空港から飛行機に乗りました。となればここは外せないでしょう。再びやってきました「大阪エアポートワイナリー」。今年二度目の訪問です。流石にインターバルが短かったのでお店に変化はないようでした。

前回同様、あまり時間が無かったため、ワインの購入のみで店内での飲食は残念ながら出来ませんでした。いつかはここでゆっくりワインを楽しみたいものですが。前見た時より醸造施設内が雑然としています。今が仕込み等で忙しい時期だからでしょうか。ところで店内のお客は一組のみ。流石にこの昼間の時間帯はお客さんが少なめです。

今回購入したのは、この一本。南オーストラリア州リバーランドのシャルドネを大阪エアポートワイナリーで醸造したものです。やはり葡萄は直接空輸したのでしょうか?味わいはジェントルなシャルドネで、優しいナチュラルな、どちらかというとソーヴィニヨンブランのような印象でした。

ワインダイアリーのテイスティングメモ

今回は、珍しく畑を訪れる事が無い訪問記でした。いつもならばレンタカーを借りて山中や郊外の農地に赴き色々とお話を伺う、という流れなのですが、最近流行りの都市型マイクロワイナリーでは様相が違いました。特にフジマル醸造所は、多くの都市型ワイナリーが葡萄を他所から買い付け醸造のみ行うスタイルなのに対し、地元大阪に自社畑を持ち醸造設備を完備し、なおかつワインに合う本格的な料理も供するという熱量の多さ。果ては醸造設備を自作したり日本の樽で仕込んでみたりと、大阪らしいチャレンジ精神をも併せ持つ「おもろい」ワイナリー。とても印象に残りました。今後も頑張って我々ワイン愛好家を驚かせて欲しいなと思いました。

[winebuff]

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