千葉の新しいワイナリー


みなさま、お元気でしょうか?winebuffです。

相変わらず新型コロナウイルス感染症が収まらない昨今、気軽に旅行できない日々が続きます。コロナ前は年に数回は遠出をして各所のワイナリーを巡っていたのですが、コロナ後は基本的に近場がメイン。少なくとも飛行機を利用した遠征はNGとなっております。去年、今年と車や電車を利用して関東近辺のワイナリー訪問を繰り返していたのですが、少々ネタ切れの雰囲気も・・・。しかし、愚痴を言っても仕方ありません。気を取り直して、今回はかなり近場のワイナリーを攻めて?みました。

winebuff一行が車でやってきたのは、千葉県多古町にある「船越ワイナリー」。2020年に設立されたという出来立てホヤホヤの新進ワイナリーです。なんと千葉県でワイン醸造所の設立は、齊藤ぶどう園に次いで90年ぶりのこと、ずいぶん待たせましたねえ(ほんとに待ってたのか?)以前、長野の某ワイナリーを訪問しようと事前調査調していた際オーナーが書かれた設立理由を拝読したのですが、ここ多古町でも同様に主力の農業に関して高齢化や後継者不足などの問題が発生しており、町おこしと農業活性化の為にワイナリーを立ち上げたそうです。

多古町の船越地区に立ち上げたので「船越ワイナリー」ですか。メンバーの平均年齢が還暦を超えている事に加え、ワイン作りの経験は一切無しという一見無謀な挑戦の様にも思えますが、反対にその年齢で新しいビジネスにチャレンジしようとする精神が素晴らしい。winebuffは感服いたしました。

ルートを確認したところGoogle Mapでは、目的地がただの雑木林だったので一抹の不安があったのですが、実際訪れてみると、(ワイナリーに到る道がちょっと狭かったのですが)ピカピカの建物が出迎えてくれました。この地区でも以前は、葡萄農園が10軒ほどあったとの事なので葡萄自体の栽培は可能なのでしょうが、(winebuffが見た限りでは)付近に葡萄が生茂る豊かな農耕地は確認できませんでした。上述した理由で葡萄農園も減少しているのでしょうか。今まで国内、海外のワイナリーを幾度となく訪問しましたが、ワイン作りが盛んな地域は、ワインで潤っており総じて町が綺麗に整備されていました。この船越地区でもそうした未来を夢見てワイナリーを立ち上げられたのでしょう。5年後、10年後、この地区がどう変わっていくかとても興味があります。

入り口で見えた白い建物が醸造設備を収めた施設になります。ワイナリーと一言で言っても色々な種類があり、自社畑と自前の醸造設備持つ大手のワイナリーもあれば、葡萄栽培のみで委託醸造するところや醸造設備のみで葡萄は契約農家から買い付けるところもあります。船越ワイナリーは醸造設備を有していますが、現時点では葡萄は各所から供給して貰っています。しかし、数年後には(頂いたパンフには2024年辺りと書かれていましたが)、多古町産のぶどうでワイン作りを開始されるそうです。


スタッフの方の許可を得て内部を拝見しました。真新しいステンレスタンクがいくつも鎮座していらっしゃいます。去年の秋に初めての醸造を行ったそうで、まだ機材全般が新しいですね。昨年は、山ぶどうとマスカットベーリーAの醸造を、種も皮も一緒に発酵させる「かもし発酵」で実施したとの事。初年度ながら、日本酒を作る際もろみを入れてお酒を絞る「酒袋」にぶどうを入れて絞るという「フナコシstyle」なるものを発明。モチベーションの高さがどれほどのものか伺えます。
もう少し詳しく説明すると、今回は、茨城県産「マスカット・ベリーA」2.5トン、岩手県産「山ぶどう」2.5トン、山形県産「山ぶどう」1.5トンを絞り、3.8トンの絞り汁を7つのタンクに分けて発酵させたそうです。


醸造施設の真向かいにあるのが、これも真新しいコンクリートの建物で、ここは、貯蔵施設になるそうです。まだ中は空っぽで、ステンレスの棚が並んでいますが、近い将来ここに沢山のフレンチ樽が積み上げられるのでしょうか、楽しみですね。ただ、この施設は自然貯蔵なのでしょうか、訪問した日もそうだったのですが、夏の暑さが気になります。もちろん、何かしら対策をされるとは思いますが。

ところで、最近話題によくなる「SDGs」。winebuff娘の通う幼稚園でも積極的な取り組みを行っていて度々メディアでも取り上げられる位なのですが(SDGsと称して使っている部屋の電気を消しまくるのは止めて欲しい・・・)、船越ワイナリーでも同様の取り組みとして、ワインの絞りカス(皮と種)を廃棄では無く肥料として活用されているそうです。カスといっても圧搾機で絞ると40kgほどにもなるらしく、その分量も馬鹿になりません。どれだけ最新の機器を使用し科学に裏付けされた手法で作ろうと、ワインはブドウの絞り汁を発酵させて作ると数千年昔から変わらない原始的な作り方なので、持続可能な取り組みとは相性が良いのでしょう。

ワイナリーの入り口付近にある警備員が待機するような掘立小屋(スミマセン)が実は、事務所です。訪問前に色々とネットで調べていた際、9月度は(忙しい為)ワイナリーでの販売を休止との告知もあり、当日も多分担当者の方は不在だろうと思い、近くの道の駅でワインを購入する予定でした。とりあえずワイナリーで写真を何枚か撮ってすぐに道の駅に移動しようとwinebuffは車すら降りなかったのですが、まさかのスタッフの方発見!色々とお話を伺う事が出来ました。

初ビンテージのワインは、この三種類でいずれも赤ワインです。岩手県久慈産「山ぶどう」を使ったワインは水色ラベル。綺麗な酸味が特徴的とありますが、アルコール度数も低めで熱い夏の日に冷やしてゴクゴク飲むのも良さそうです。茨城県常陸太田市産「マスカットベーリーA」を使ったワインはピンクラベル。すっきり軽やかでバランスが良く優しい口当たりと説明があり、日本食、特に醤油系のフードとの相性が良さそうです。山形県月山産「山ぶどう」は濃青ラベル。三種の内で一番しっかりとした、肉料理やコクのある料理とのマリアージュが最高とのこと。winebuffは、迷わず?山形県月山産「山ぶどう」を1本購入。早速、その晩、テイスティングさせていただきました。

ワインダイアリーのテイスティングメモ

購入時、事務所にお邪魔をし、雑談をしながらふと横を見ると、見かけないラベルのボトルが並んでいるのを発見。聞くと次ビンテージ用のラベルとか。しかも種類が二種類増えています。追加となるワインが何かお聞きするのを失念してしまいましたが、ラベルのデザインに付いて説明をお聞きしました。ラベルに描かれているのは、カワセミで、多古町を南北に流れる栗山川にも生息する鳥だそうです。カワセミは水の綺麗な川に生息する鳥で、いつまでも綺麗な水であることを願って、多古町に縁のある黒板アートの「すずきらな」さんに描いて頂いたそうです。

ワイナリーで頂いたパンフにワインについての詳細な説明が書かれていました。そこでは触れられていなかったのですが、自社畑は、10年位前までブドウ畑だった2,500平米の農地を使い「ヤマ・ソービニオン」の植樹を既に開始。今年は更に10,000平米まで拡大し数年後の収穫を見込んでいるとのこと。それが実現すると名実ともに「多古ワイン」が誕生し、念願の6次産業にむけて大きな前進になることと思われます。

最後、おまけですが、ワイナリー入り口付近のフェンスにぶどうを見つけて思わず写真を撮りました。丸々とした大きな実がたわわになっており、おお、立派なぶどうが育っているなと感心したのですが、よく見たらフェイク。ちょっとがっかりしました。(苦笑)

今回は、車で日帰りできる距離のワイナリーを訪ねました。近年、winebuffが住む東京にもワイナリーなるものが幾つも誕生しましたが、飲食店の付加価値作りや、ぶどう栽培を一切やらない話題先行型のマイクロワイナリー等は、個人的にあまり興味が湧きませんでした。(決してそれらの業態を否定している訳ではないので誤解なきよう。)船越ワイナリーについても、どれほどのものか事前に分からなかったためあまり期待していなかったのですが、ワイン作りにかける情熱を十分に感じましたし、何より飲んだワインが美味しかったのは、とても嬉しい出来事でした。スタッフの方の話では、ここ千葉県で更に2箇所、新規ワイナリーが設立されるらしく、今後ワイン不毛の地だった千葉県(失敬な!)に新しい流れが来る事を予感しました。

[winebuff]


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