長野ワイナリー紀行その3


ヴィラデストを後にして向かったのは、近隣にある、2015年開業の「アルカンヴィーニュ」。このワイナリー名には、「ブドウで繋ぐアーチ」という意味があり、自社ブランドのワインを作る傍ら、新規就農者らのワインの委託醸造も行っているそうです。また、栽培・醸造・ワイナリー経営を学ぶ「千曲川ワインアカデミー」を開催。正式名称が日本ワイン農業研究所「アルカンヴィーニュ」というだけあって、ワインに関する様々な取り組みを行っています。


アルカンヴィーニュ
〒389-0505 長野県東御市和6667
 
 
アルカンヴィーニュの建物は木造で、一階に醸造場や熟成庫などの工場設備があり、二階にテイスティングルームやショップ、ラウンジ、ワーキングルームなどが設けられています。写真の正面入り口は、二階にあたります。

アルカンヴィーニュのオリジナルワインは、ソーヴィニヨン・ブランやシャルドネ、メルロー等の欧州系品種の他、ブラッククイーンや巨峰、善光寺ブドウの名で知られる「竜眼」等、日本の品種も栽培されています。変わり種としては、長野県産のゆずを使用したシードルも。winebuffは、ここではソーヴィニヨン・ブランを一本購入しました。

ワインダイアリーのテイスティングメモ

ラウンジには、フランスのシードル農家から譲り受けた、古い破砕機とプレス機を改装した二台のバーテーブルが置かれています。また、床のフローリングは、住友林業が上海の工場で加工したウィスキー樽のバレルオークが使用されています。細部にこだわりを感じますし、センスも良いですね。

このワーキングルーム?の横に一階に繋がる階段があり、そこを降りていくと・・・

ワイン樽とステンレスタンクが鎮座ましましています。まだ出来て間もない施設なので、設備もピカピカで、ゴミ一つ落ちていません。

自社ワインの製造・販売はもちろん重要ですが、アルカンヴィーニュが主催する「千曲川ワインアカデミー」の活動もとても重要との事。アカデミーでワイン作りやワイナリー経営を学び、実際にワインを世に出した小規模生産者の方々も多くいらっしゃるようです。日本のワイン作りを単なるブームで終わらせない為にも、こういったワイン生産者を下支えする取り組みは、大切ですよね。


リュードヴァン
〒389-0506 長野県東御市祢津405
 
 
お次のワイナリーは、車で十数分走ったところにある「リュードヴァン」です。小山英明氏によって2010年に設立された、「ワイン通り」という意味の名を持つワイナリーです。元々、大手電機メーカーに勤めておられた氏が脱サラし、山梨や安曇野のワイナリーで修行。その後、紆余曲折を経ながらリンゴ農園であった3.7haの荒廃農地を開墾し、念願のワイン作りを開始したのが2006年。2008年には、委託醸造でワインを初リリースして現在に至ります。

写真に映る青いルノーは、小山さんの愛車だったもの。ワイナリーのコーポレートカラーである青色は、この車に由来するものとか。

ワイナリーの建物は、さほど大きくはありませんが、ショップだけでなくカフェレストランも併設しており、地元産の旬の食材を中心に、ワインと料理の美味しいマリアージュを楽しめます。冬場は、かなり冷え込むのでしょうか、屋根から伸びる大きなストーブの煙突がアイコンになっています。

訪問したのが、ちょうどお盆の時期だったのですが、ワイナリーではお盆特別営業として、「お盆スペシャルワンプレート」なるメニューを提供していました。同様に、醸造所とセラーの見学ツアーも催行していたようです。

小ぢんまりとした店内で、ぶどうジュースを頂きました。日差しも強い真夏日だったので、冷たいジュースでちょっと一休みです。お店の人に、ワインのラインナップや、葡萄畑の事を色々とお聞きしました。

その横の棚にリュードヴァンのワインがずらりと陳列されています。赤の主力品種がカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロー。そのブレンドの「ドゥー・ローブ・ヴィオレット」がフラッグシップワインとの事ですが、残念ながら売り切れで手に入りませんでした。代わりに、ピノ・ノワールをベースに少量のシャルドネをブレンドしたロゼの「クレール」を一本購入。

そうそう、このワイナリーには、ワイナリードッグならぬワイナリーキャット、看板猫のココちゃんもいました。残念ながら、あまりの暑さで接客も滞りがち。猫じゃらしでコミュニケーションを図るも、一度しか反応してもらえませんでした・・・。

5.3haの畑は、様々な標高の土地に分散しており、写真のワイナリーに隣接する畑では、カベルネ・ソーヴィニヨンが栽培されていました。


はすみふぁーむ&ワイナリー
〒389-0506 長野県東御市祢津413
 
 
さて、最後に向かったのは、リュードヴァンのすぐ近く、というか隣接している「はすみふぁーむ&ワイナリー」です。10代で単身渡米した蓮見喜昭氏が、2005年に東御市に移住し「はすみふぁーむ」を設立。2009年に委託醸造によってワインを初リリースし、2010年に自身のワイナリーも立ち上げ2011年より醸造開始。お隣のリュードヴァンとほぼ同時期に同じ土地でワイン作りを始めたというご縁のある両者ですが、ワイン作りに至るまでの道は、それぞれ異なるものだったようです。

リュードヴァンもシンプルな佇まいでしたが、こちらはさらにコンパクトな建物。掘っ建て小屋のような(失礼!)ショップ内には、主にはすみふぁーむの自社ワインが陳列されていました。しかし、聞くところによると、アクセスの良い上田市にはすみふぁーむの直営アンテナショップ&カフェがあり、そこでは、はすみふぁーむのワインやジュース、ジャム、オリジナルのグッズなどの販売に加え、テイスティングサービスも提供しているとの事。ちょっと安心しました。

winebuffは、迷った末、写真の「千曲川ワインバレー」シリーズのシャルドネを一本購入。

ワインダイアリーのテイスティングメモ

実は、winebuffは、蓮見さんの書かれた「ゼロからはじめるワイナリー起業」(虹有社)を拝読しており、一度訪ねてみたいとかねてより思っていました。その願いが叶って今回訪問したのですが、あまり時間が無く十分お話を聞く事が出来ませんでした。また、何か機会があれば、ワイナリー設立の苦労話等をゆっくりお聞きしたいです。

ワイナリーの隣の畑では、ピノ・ノワールが育っていました。葉っぱがブツブツになっているのは、葉の裏からダニに侵されてしまったからだそうです。

はすみふぁーむの畑は、十箇所に分散しており、それを意図したわけでは無いが、天候や病害等のリスク分散にも役に立っているとのこと。その他、興味深かったのは、葡萄の被害でハクビシンによる食害が発生しているというお話。グルメなハクビシンは熟した葡萄しか食べないそうで、その食害を防ぐには、電気柵が有効とのこと。
栽培醸造担当の森田さんに色々とお話をお伺いしました。ありがとうございました。

今回は、山梨や北海道と並ぶ日本ワインの名産地、長野だけあって中々レベルが高いなと感じました。ただワインを作るだけでなく、持続可能な6次産業を推進するため、観光やビジネスサポート、技術改良等々、様々な取り組みを積極的に行っている先進地域でした。その努力は、もちろんワインの品質にも反映されていますし、今後の発展にも期待が持てます。次は、同じ長野でも千曲川以外の桔梗ヶ原や日本アルプスなどに足を運んでみたいと思いました。

[winebuff]

長野ワイナリー紀行その2


次にやってきたのが、東御市を中心とした「千曲川ワインバレー東地区」にある「ヴィラデストガーデンファーム&ワイナリー」。この地区では、小規模ワイナリーの集積によるワイン産地の形成を目的に、八市町村が合同で広域ワイン特区を構成しています。その中でも中心的な存在と言えるのが、このヴィラデスト・ワイナリーです。

エッセイスト、画家として名をなした玉村豊男氏が1991年に現在の東御市に移住し、ハーブや西洋野菜を栽培する農園を立ち上げたのが始まりで、2003年に果実酒製造免許を取得し、「ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー」をオープンしました。


ヴィラデストガーデンファーム&ワイナリー
〒389-0505 長野県東御市和6027
 
 
車を駐車場に止め、階段を降ると見えてくるのが、この「ヴィラデストカフェ」。畑から採ったばかりの野菜やハーブをこの地で作ったワインと一緒に楽しむというコンセプト。特に西向きのテラス席は夕陽をながめる最高のポイントのようです。個人的には、北アルプスに沈む夕陽を見ながら楽しむサパーコースが良いなと思いました。

訪問した際は、期間限定の外デッキ「玉さんBAR」が開催されていました。30ccずつワインを嗜むテイスティングメニューもあり、ヴィラデストの殆どのワインが試飲可能です。ワイン以外にもシードルやノンアルコールジュース等も楽しめます。

カフェの隣には、ワイナリーショップがあります。ヴィラデストのワインはもちろん、玉村豊男氏の様々な作品、氏の絵画の他にも氏の絵が描かれた食器や文具、雑貨、ガーデンの花のドライフラワー等、多種多様のオリジナルグッズや書籍で溢れています。ショップのグッズは、オンラインショップでも購入可能で、かなり手広くやっているなという印象でした。

winebuff的には、ヴィラデストカフェでも使用しているという、農園でつくる野菜を描いた「ベジタブルシリーズ」の食器に惹かれました。見ているとつい欲しくなるのですが、買っても使わないで死蔵という事も多いため、ここは、我慢のしどころです。

本当は、ここのカフェレストランでランチをと考えていたのですが、人気スポットだけあって問い合わせた時点では、すでに満席。ランチタイムのコース料理だけでなく、レイトランチのワンプレートや早めの夕食のサパーコース、モーニングやスイーツ等メニューも豊富です。イベントでメーカーズディナーやワインパーティーなども度々開催されているとか。次の機会には、是非参加してみたいです。

ワイナリーのカフェとは思えないほどの充実度!そこいらのカフェよりか気合いが入っています。ブルーベリーのタルトなんてベリーのてんこ盛りですね。せめてゆっくりお茶をしながらスイーツでもと思ったのですが、この後もワイナリー詣でが予定されており、あえなく断念・・・。

ショップだけでなく、カフェの方でも色々なお土産が販売されています。定番のジャムやジュース、ハーブ以外にも玉村豊男氏の著作がずらっと並べられています。ふと、反対側の方を見ると・・・。

窓越しに階下のワイナリーが拝見できました。日本ワインコンクールの最高金賞受賞の実績もある、ヴィラデストの高品質ワインがここで作られています。今回は、参加できませんでしたが、土日祝日には、ワイナリーツアーも開催されているとの事、次回は、ツアーにも参加してみたいです。

ワイナリーに隣接して、野菜や花、ハーブなどが咲き乱れるファームガーデンがあります。5月半ばから6月にかけての、クレマチスやアジサイ、ラベンダーなどが咲く時期が、一番綺麗な季節と HPにも書いてありました。

標高850mにある7haの畑では、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、ピノ・ノワール、シャルドネといった欧州系品種のぶどうが植えられています。訪れた日もとても暑い日で、葡萄がすくすく育っているのが分かりました。今年のワインも期待が出来そうです。

さてさて、ワインバレーというだけあって、近隣にも沢山の小規模ワイナリーが点在しています。時間も残り少なくなってきたので、できるだけ多くのワイナリーに行ってみましょう。

[winebuff]

長野ワイナリー紀行その1


今年は、積極的にブログを更新(といっても数ヶ月に一回程度)しているwinebuffです。

この夏は、家族で群馬の家(winebuffにとっては義理の祖父の旧宅)に出かけて、娘に初の田舎ライフを体験させました。家の周囲は、もの凄い僻地なのですが、軽井沢に近いという事もあり、車で長野のワイナリーまで足を伸ばす事ができました。


マンズワイン小諸ワイナリー
〒384-0043 長野県小諸市諸375
 
 
最初にやってきたのは、ここ「マンズワイン小諸ワイナリー」。長野県は、日本の中では比較的降水量が少ない県で、日照にも恵まれ一日の寒暖差も大きい、葡萄栽培に適した地域です。マンズワインは、1971年に醸造用ぶどう契約栽培をこの地で始めました。カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シャルド等の欧州系品種をメインに据えており、長野県産の葡萄のみで作るプレミアムワイン「ソラリス」シリーズが世界的にも高い評価を受けている、日本有数のワインメーカーです。

車でワイナリーに到着したのが、ちょうどお昼どきだったので、まずは、ランチをと、メインの建物の二階にあるカフェ・レストラン「ラ・コモーロ」に向かいました。室内の席もありましたが、今日はせっかくの上天気だったので、畑を一望出来る屋根付きテラスに座りました。

お盆の時期だったので混雑が心配だったのですが、(実際、当初予定していた他のワイナリーのレストランは、予約で満席状態。)運良くテラス席に陣取る事ができました。

テラス席と言っても、空調が効いた申し分の無い空間で、汗をダラダラ流して「やっぱり自然の風が気持ちいいね」などとやせ我慢する必要もありません。メニューには、ワインにベストマリアージュの本格フレンチもあったのですが、飲酒はご法度の悲しいドライバーのため断念。

まあ、子連れですからそんなメニューは頼めません。結局、注文したのは、無難かつ定番のパスタやピザの品々。自然を愛でながら食べる食事は、最高!と言いたかったのですが、お味自体は、まあ普通。美味しくも無し不味くも無し・・・。ここにグラスワインでもあれば、と昼から優雅にワインランチをしている隣客を横目で睨みながらのランチタイムでした。

とはいえ、眺め自体は最高で、葡萄畑を俯瞰する席でのランチは、なかなか無い貴重な経験でした。おや、何やら畑のすみに巨大な樽みたいなものが見えますね。

この巨大な素焼きのカメは、古代ワイン史のモニュメントというべきもので、スペインのラ・マンチャ地方で今でもワイン造りに使用されている「TINAJA(ティナハ)」です。マンズワインは、スペインから輸送した現物を小諸と勝沼の両ワイナリーに一つずつ展示しているそうです。

メインの建物の一階は、通常のショップになっています。大手のワイナリーなので扱っているワインや土産物も多くあるのですが、プレミアムワインである「ソラリス」シリーズは、注文する毎にわざわざセラーから運んできてくれます。ですので、コンディションも抜群です。winebuffは、ソラリスのカベルネとメルローを計二本購入!

ワインダイアリーのテイスティングメモ

このマンズワイン小諸ワイナリーは、敷地も広く、レストランやショップ以外にも見所があります。必見なのが、「万酔園」という信州の風土を模した約三千坪の日本庭園です。庭園の地下には、通常非公開のセラーが広がり、特別なイベントの際に公開される茶室もあります。ぶどう文様の敷石は、きめ細かい愛知県産の三州瓦に手彫りで装飾を施したもので、小諸に7年暮らした明治の文豪・島崎藤村の歌碑もあります。

庭園の一角には、樹齢100余年の善光寺ぶどう(龍眼)も。三代目社長であった茂木七左衞門が民家の庭先で偶然発見したという、絶滅品種の善光寺ぶどうの原木がこのワイナリーに移植されています。

雨の多い日本のワイナリーでは良く見られる、ビニール被覆を組み合わせたレインカット栽培ですが、それを考案したのがマンズワインに勤めていた志村富男氏で、マンズレインカット栽培法と呼称されています。ワイン用、生食用ブドウのどちらにも適用可能で、雨に当たらないため、農薬の薬剤散布が少なくてすむメリットもあります。

さあ、腹ごしらえも終了しましたし、次のワイナリーへと向かいましょう。

[winebuff]


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