中部地方のワイナリー


みなさん、こんにちは。最近は、国内ワイナリーを精力的?に訪問するwinebuffです。最初、国内のワイナリー巡りといえば北海道や山梨などの有名どころが主だったのですが、四大産地など一通り行ってしまうと、その後は、あまり知られていないマイナーな地域にも足を伸ばすようになりました。昨今のワイナリーブームの追い風もあり、全国で新規ワイナリーが雨後の筍のように増え、もはやwinebuffもその総数を把握し切れていないほどです。ですので、まだまだ訪問可能なワイナリーが沢山あります。

前置きはさておき、今回は、中部地方、愛知と岐阜のワイナリーにお邪魔しました。名古屋駅まで新幹線で行き、その後は車移動です。今回は、今までに無い変わり種のワイナリーという事で、私もちょっと期待しています。何が変わっているかって?早速ご説明いたしましょう。

やってきたのは、多治見修道院。岐阜県多治見市にあるこの修道院は、1930年(昭和5年)にカトリック神言修道会のドイツ人宣教師モール神父によって設立されました。当時は、外国からの宣教師が大勢ここに来られ、日本語の勉強をしながら修道生活を送ったり、キリスト教布教のための拠点として利用されていたようです。中世ヨーロッパを彷彿とさせる独特の建物は、圧倒的な存在感があり、多治見市の観光地としても有名です。

でも何故、修道院?ワイナリーと何の関係があるの?と思われた方もいらっしゃるかと思います。winebuff一行が訪れたのは、もちろんここでワインを作っているからです。言い換えると、この修道院自体がワイナリーでもあるという事です。ふうむ、では早速、正門をくぐってみましょう。残念ながら建物内は撮影不可になっているので、屋外の写真のみになります。あしからずご了承ください。

建物入り口のすぐ側に修道院の地図があります。それを見ると一目瞭然なのですが、院内にぶどう畑が広がっています。3千坪にも及ぶワイン用ぶどうの栽培と地下の醸造施設、もうこれは立派なワイナリーです。実は、設立当初からここでミサ用ワインを作っており、後年それが多治見ワインとして世に広まっていったとか。日本で唯一の修道院ワインとしても有名なんです。

正門脇には、聖母マリア像が荘厳な立ち姿で訪問客を見守っています。こういったところは教会の定番風景ですね。そうそう、修道院と名前が付いているのですが、教会も併設されています。1930年の設立より(移転で一時期中断もありましたが)、院内にカトリック多治見教会があります。初代主任司祭は、修道院のモール神父が兼任されていたそうで、修道院の聖堂と一部施設を使用して宣教等の教会活動も行っているそうです。

建物の前に広がるぶどう畑ですが、訪問した11月は既に収穫は終了しており、ぶどうの枯れ葉が残るのみ。例年ですと11月に修道院主催のワインフェスタが開催されるのですが、去年今年と新型コロナウイルス感染症予防の観点から中止となっており、やや寂しい雰囲気です。フェスタでは、フードの出店が並んだり、様々な国の修道院ワインが楽しめたりととても魅力的な催しのようだったのでとても残念です。来年こそは、復活して欲しいですね。

畑では、新しいぶどうの苗木を植えているところもありました。修道院の畑で栽培しているぶどうは、赤は、マスカット・ベーリーAやカベルネ・ソーヴィニヨン、白は、あまり聞き慣れないローズ・シオターという種類だそうです。ローズシオター種は、1920年代にかの川上善兵衛氏によって作られた、ベーリー種とシャスラー・シオター種の交配種です。

建物を回り込んで「やすらぎの道」を行きます。道の両脇もぶどう畑が広がっており、winebuff娘は、たんぽぽの綿毛を取るのに懸命でした(苦笑)。

やすらぎの道の終点に多治見修道院墓地があります。この地で宣教師としての使命を全うされた神言会司祭、修道士の方々が眠っておられます。静寂が支配している厳かな雰囲気の場所です。

建物を入るとすぐに大聖堂があり、大聖堂入り口右手に小さな売店がありました。そこでwinebuffは、赤ワインを1本購入。後述するワインフェスタの陶器のグラスで後日ワインを頂きました。因みにワインは、赤、白、ロゼ各一種類のみで、それぞれフルボトルとハーフボトルがありました。ハーフでも良いかなとも思ったのですが、ハーフの赤が売り切れだったのでフルボトルを購入。正直ちょっと高いと感じたのですが、寄付のつもりで買いました。

ワインダイアリーのテイスティングメモ

さてさて、修道院を後にしたwinebuff一行は、次は腹ごしらえとばかりに移動を開始。事前にあまり調べてこなかったのですが、付近で車が停められる美味しいお店を探し、前日重ためのディナーを食べていたこともあり、あっさり和食をチョイス。やってきたこの讃岐うどん屋「たじみ庵」もちょっと変わっていて、太陽社電気多治見工場の敷地内にありました。工場の社員さんらしき人たちも多く、一瞬社食かと思ったくらいです。お昼時で人も多く、結構待たされたのですが、食事自体はうどんという事もあり、さほど時間は掛かりませんでした。

せっかくですからご当地っぽいものをと思い(と言いながら讃岐ですが)、味噌煮込みうどんを頼みました。見た目よりもあっさりしていて味噌のしつこさは感じませんでした。

winebuff的には、こちらのカレーうどんの方が好みで、こちらもさほど辛くなくあっさり系の味付け。体もホカホカ暖まるのでこれからの季節にぴったりです。

体も暖まったところで、それでは次のワイナリーへと参りましょう。岐阜県から愛知県へと車を進めます。県跨ぎとなりますが、これから行くワイナリーは多治見修道院と関係の深いところです。何故なら、多治見修道院のワインを醸造しているのが訪問予定の小牧ワイナリーだからです。修道院から車で20数分、15km程離れたところに小牧ワイナリー があります。このワイナリーも昨今の感染症対策でサービスを制限しておりオープンしているか少々不安だったのですが、よかった開いていました。

建物は、この様にショップとカフェ、多目的ホールの入っている棟と醸造施設の棟の2つに分かれています。小牧ワイナリーは、正式名称が「社会福祉法人AJU自立の家 小牧ワイナリー ななつぼし葡萄酒工房」といい、障害者の就労支援の場として愛知県小牧市に2015年にオープンしました。新進のワイナリーの様に思えますが、実は、2003年よりワイン事業に取り組んでいるそうで、元々は多治見修道院でワインを作っておられたとの事。現在は、ここ小牧ワイナリーと多治見修道院で、障害者の方々がぶどうの栽培と醸造、それに販売までされているそうです。このあたりは、ココ・ファーム・ワイナリーのこころみ学園と合い通ずるものがありますね。

まずは右手のショップに入ってみましょう。残念ながらカフェの方は現在休業中で、近日再開に向けて準備されているそうです。当初、ここでお茶かランチをと考えていたのですが、まあこれは仕方ありませんね。因みにゴールデンウイークに開催されるワイナリーのビッグイベント、春のぶどう酒祭りも今年は中止に。早く以前の様な日常が戻ってきて欲しいと切に願っています。

ワインのブランドは、「ななつぼし」。幸せを運ぶと言われるてんとう虫からとった「ななつぼし」が名前の由来だそうで、小牧産や名古屋産のぶどうの他に山形県産のぶどうを使ったワインがありました。オーストラリアに所有する畑のぶどうで作ったワインもあり、こちらはAJUワインとして販売。変わり種は、写真中央に見える「料理用ワイン」。ワイナリーで料理酒が売られているのはあまりない上、普通にワイン用フルボトルで販売されていたのには少々驚きました。

そして、ワインの購入者には、もれなく陶器製のワイングラスをプレゼント。太っ腹と思ったのですが、よく見ると多治見修道院のワインフェスタの刻印が入っています。それも10年以上前のもの。余り物の処分かよと突っ込みたくなりましたが、AJUワインを1本購入したということもあり有り難く1つ頂戴しました。(前述の写真参照)

ワインダイアリーのテイスティングメモ

さて、無事ワインもゲットしてショップを出てふと横を見ると、二つの棟の間に通路らしきものが。「ぶどう広場 見学順路」と張り紙がしてあり、誘導の矢印も。奥の方に何かあるようですので、見てみることにしましょう。

右手には、かなり年季の入ったワイン樽が二つ。塗装し直しているようですが、ワインが入ってる様には見えません。確信はありませんが、多分、使い終わった樽をテーブル等に再利用しようとしているのでは無いでしょうか?

左手には、飛ばされないよう生木の重しを乗せたテントが。よく見ると小さな説明板がついています。「アパッシメント製法(日陰干し)実験場」と書いてあります。日陰の「日」の部分に「ここ重要」とわざわざ注釈が打ってありました。アパッシメントは、ご存知の方もいると思いますが、イタリアやチリなどで行われる、完熟ブドウを3、4ヵ月陰干しし水分を取り除いて糖度を上げる手法です。糖度の高いぶどうを使った方が良いワインが出来るのですが、いちいち陰干しをするのは手間と時間が掛かります。しかし、小牧ワイナリーでは、「陰干し」ではなく「日陰干し」なんですね。ぶどうを日に当てて乾燥して良いのでしょうか?説明には、更に「10月から2(3)月まで。絞って発酵まで行けたら儲けもの」とありました。なかなか面白い取り組みですね。

通路を抜けると裏手に出ます。「ぶどう広場」はいずこに?どう見ても作業場で、薪の様なものが散乱しています。人っ子ひとり見えません。その向こうには、既に収穫を終えたぶどう畑が広がっています。写真には写っていないのですが、施設の前が広場になっており、子供の遊具やアスレチック器具が設置されていました。winebuff娘も遊具で遊びましたし、車でやってきた家族も何組かいました。ワイナリーは近隣住民の憩いの場としても利用されている様子でした。

おまけ:帰りの新幹線では、富士山がとても綺麗に見えました。

今回は、というか今回もワイン過疎地(もとい新興地)のワイナリーに足を運びました。町おこしの6次産業の一助としてワイナリーを起こす、または脱サラして自己実現のマイクロワイナリーを起こすなどというパターンは多いのですが、この様に障害者支援の一環としてのワイナリー起業はそれほど多くなく、とても印象的でした。また、その様なワイナリーが修道院とつながり協力しあっているというのも稀有な例かと。正直ワインの味は優れていると言い難いのですが、修道院ワインもななつぼしワインも今後に期待したいと思ったwinebuffでした。

[winebuff]


ブログTOPへ